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山歩きの「基本」と「コツ」について
掲載日:2022年8月1日
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山歩きの「基本」と「コツ」
1 春・夏・秋山の服装(無雪期)
長袖シャツ
- 長袖で、保温性に優れ、濡れても冷たく感じないウールと化学繊維の混紡でスリーシーズン用が便利。
- 長袖は、日焼け、虫刺され、木の枝から皮膚を守り転倒の際に体を保護してくれる。
ズボン
- 長ズボン又はニッカーズボン、ウールと化学繊維の混紡でストレッチのきくゆったりしたスリーシーズン用が便利。
- ニッカーズボンは、膝の動きが楽で裾が邪魔にならないので人気がある。
- ジーパンは、濡れると重くなり、体の動きが悪くなるので登山には全く向きません。
- ショートパンツは、転倒時にケガ、足腰を冷やすので登山には全く向きません。
登山靴
- 捻挫を防ぐために、「足首」までしっかり包むゴアテックスか革製の「軽登山靴」がよい。靴は山歩きの命。
- 靴を購入する時は、足が大きくなっている夕方に。靴下は少し厚手の製品1枚で十分。
足にフィットしていることが大切。 - 山小屋・旅館では間違いやすいので、名前や目印をつけること。
- 新しい靴は履きならしてから使う。
- 靴のひもは、登りは少しゆるめに、下りはしっかり結ぶこと。
雨具とカサ
- 上着とズボンが分かれたゴアテックス製品がよい。
- 上着、ズボンとも、防風・防寒具として兼用できる。
- 良質な製品を用意すること。
- 一番上に着るので、一つ大きめのサイズを選ぶ。雨天の日は気分も暗くなるので明るいカラーのものを。(万が一のときは、目立ちやすい)
- 雨具を着用したら、休憩の際に湿気をぬくこと。足のさばきをスムーズにするため、ヒザ下をゴムバンド等で止めると歩きやすい。
- 天候の急変は日本の山岳では当たり前。なお、気象を把握することは非常に難しいため、天気予報で降水量「0%」でも雨具は、必ず持参すること。
- ビニールのレインコートは全く役に立たない。(厳禁)
肌着(アンダーウェア)
- 汗による不快感や冷たさが少ない新素材の肌着が優れている。綿製品は、登山中は、着用しないこと。
- 綿の肌着は、濡れると保温力がなくなり、体を冷やすので厳禁。
- 女性は、身体を締めつける肌着は着用しないで、伸縮性のあるもの(スポーツ用)を
着用すること。
帽子
- 落石や木の枝などからの頭の保護、防寒、日よけ、雨よけ、日射病を防ぐ。
- 風で飛ばされないように「ヒモ」をつける。
- 早春、晩秋、雪のある山では、耳まで覆う帽子が必要。
- 記念バッジなど金属製のものは「雷」が落ちるのでつけない。
防寒着
- 山の朝・晩などは、冷えるので夏山でも“薄手のウール”のセーターを持参すること。
- セーターは、シャツの下に着ると、保温効果が高まる。
2 行動用具(必需品)
ザック
- 大きさや形は、山行スタイルによって使い分ける。ザックは、日帰りで25リットル、1泊~2泊で35リットル、2~3泊で45リットル、3~5泊で60リットル位が目安です。
- 購入の際は、体にあったものを選ぶこと。シンプルな製品が使いやすい。
- サイドポケット、ウエストベルトの付いたものがよい。
- 雨対策として「ザックカバー」も用意する。風で飛ばされるので、「ヒモ」を付ける。
水筒
- 容量は、1リットル位のアルミ製品で「防錆加工」してあるもの。
- 下山するまで全部を飲まないで、必ず残す習慣をつける。
- 水筒には水(湯冷まし)を入れる習慣をつける。水は、救急薬品。
- 人間の体重の65%は「水」です。休憩時は、一気に飲まないで、少しずつゆっくり飲むこと。
- 飲むときは、口に含んでからゆっくりノド元を通すと少量ですむ。
- 水場では、補給する習慣をつける。そして、水場は汚さないことがマナー。
ヘッドランプ
- 行動中は、両手を空けなければならないので“ヘッドランプ”を携行すること。
日帰りでも必ず携行すること。 - 電池の予備を持参すること。節約して使う習慣を。
- 電池寿命は、非常に短いので要注意。リチウム電池は、寿命も長く、低温でも効果が落ちない。
手袋
- どんな山行でも「手袋」持参。
- 夏山は、軍手と雨天用を持参する。
- 春山、秋山、冬山は「ウール製品」を。
ホイッスル
- 道に迷ったり、仲間との連絡、トラブルの連絡に使う「非常用」。
- 大声を出すと、体力を消耗する。
地図とコンパス
- 出掛ける前に「山の概要」を知るために、日程表と地図を照合してあらかじめ、「机上登山」で“予習”をすること。
- 行動中、常に携行し、休憩時に確認する習慣をつける。
行動食
- 「保存性」のよいもの。
- ビスケット、チョコレート、干ぶどう、アメ、センベイ、コンデンスミルク、羊かん、サラミソーセージなど。
その他持参するもの
- 健康保険証(写)に血液型と緊急連絡先を明記。
- 洗面用具
- ゴミ袋
- 救急薬品
- 持病薬(女性は生理用品)
- ライターとマッチ
- サングラス
- 新聞紙
- ナイフ
3 小物いろいろ
ストック(杖)
- 常に補助手段として使用し、たよりにしすぎないこと。体重をかけすぎないこと。
- 常に「山側」の手で使う習慣をつけること。「谷側」は、事故のもと。
- 登りはやや「短め」、下りはやや「長め」に調節。
- 使っていると、ストッパーが「ゆるむ」のでチェックを忘れずに。
スパッツ
- 靴に「小石」や「雪」が入るのを防いだり、保温やズボンの汚れを防ぐ。雪のある季節や悪路は、ロング、他の季節はショートスパッツを。
マッチとライター
- タバコを吸わない人が多くなり、マッチやライターを持たない人も多い。ポケットティッシュと一緒にビニール袋に入れて非常用に携帯。
アイゼン
- 積雪が予想される季節の必需品。山行前には、「着脱」の練習と、「歩行訓練」もあらかじめ行うこと。
- 中級以上の山岳では、6本爪以上が必要。4本爪は、低山ハイク用。登山靴をゴムバンドで止める製品は、少しのショックで切れたり、外れるので危険。「ヒモ」で止めるものが安全。
4 行動中の注意
- 歩きはじめの服装は、少し寒い位がよい。スタートすれば暖かくなる。
- 「準備体操」は、しっかり行う。
- 歩くときは、手で「荷物は持たない。」歩行中、飛び下りたりしないこと。
- 手袋を着用。「クサリ場」「鉄ハシゴ」「岩場」は素手でつかんだ方が滑らない。
- ザックの回りにコップやマップなどをぶら下げて歩かないこと。バランスがくずれ、疲れのもと。
- 「飲料水」は、出発前に用意すること。
- 空腹では、歩かないこと。
- 「吊り橋」を渡る時は、少人数で、足並みを乱して歩くこと。歩調を合わせると、左右に振動して危険です。
- 登山道のクサリ、ハシゴ、丸木橋などはあくまでも、“ 補助” として利用し、自分の手と足で行動すること。
- 危険な場所は、あわてず、一歩一歩慎重に「3点確保」で行動すること。
- 登山道では、浮き石に乗らないで、落石にも注意
- 落石は起こさないこと。
- 落石が発生した場合は、大声で他の登山者へ知らせること。
- 雪渓での落石は、音を立てないで落下するので注意。
- 雨が降る続いた時などは、浮き石が多くなり、落石が発生する。
- 落石が発生している所は、周囲を見て迂回すること。
- 歩きながら話したり、歌ったりしないこと。
- 山では、登り優先が基本
- 安全な場所で譲り合うこと。
- 山側に身を寄せて待つこと。
- 行動中は、汗をかくので薄着で。
- 休憩地や山小屋では体を冷すと、筋肉が固くなり、思わぬトラブルにつながり
疲労が倍加する。 - 体を冷やさないことは、大切な技術。寒いと感じたら「すぐ1枚着用」すること。
- 休憩地や山小屋では体を冷すと、筋肉が固くなり、思わぬトラブルにつながり
- 団体行動で歩く場合は、どうしても仲間と間隔があくこともあるが、無理をしないで
後の登山者に譲ること。 - トイレの「ガマン」は禁物。
- ガンバリ過ぎは「事故のもと」
- 体調が悪いときは、素直な気持ちで協力を求めること。
- 常にお互いの体調を確認しあう気持ちが大切です。
- 下山後、ビールやジュースを飲む前に、自ら進んで「ストレッチ体操」を行う習慣をつけること。
- 山のマナーについて
- 「ゴミは持ち帰る」
- 「狭い場所では譲り合う」
- 「山小屋では小声で話す」
- 「火の用心」
- 「高山植物を採らない」
5 山でのトラブル
- 登山中の事故は、「転落と滑落」が全体の50%を占め、下山時が圧倒的に多い。
- 下り時は、靴のヒモを締め直し、気持ちを引き締めること。
- 難しい岩場や尾根などでの事故のほか、普通の登山道で足を踏み外して滑落するなど、信じられない「不注意のミス」が多発しています。
- 登った「安心感」、下りは楽だという「気のゆるみ」、木の根や小石につまづいたり、浮き石やコケの石にのり、足を滑らせたり・・・「不注意」によるトラブルは非常に多い。
十分注意して、とにかく慎重に歩を進めること。 - 中高年は、どうしても平衡感覚や筋力が低下する。「転倒」しただけで手首や足首の捻挫・骨折をする人が多くなっています。
- 下りは知恵を働かせて歩く。登りは「体力」、下りは「技術」
- 一日の行動中、「13時から15時」ごろが疲れがたまり、「注意力が減退」するので要注意。
下着のご用心
- 大正12年1月、日本人初のヒマラヤ(マナスル)に登頂された登山家の槇有恒氏ら3人が冬の立山で遭難。この時、綿の下着の1人が死亡、槇氏ら「ウール」を着用していた2人は助かる。1989年(平成元年)10月、に立山で死亡した中高年の8人は「綿」の下着で、5人が「布製の軽登山靴」だった。下着は、クロロフャイバーや、ダクロンなどの製品を着用する。中間着で人気の「フリース製品」は、暖かいが「火」や熱に弱いのでタバコの火などに気をつける。
タバコと飲酒は要注意
- 行動中の飲酒は、事故につながるので厳禁。
- 高い山では、酔いが早く、体温を低下させるので、飲酒は防寒にならない。
- 一日の終わりに、山小屋で少量の飲酒は緊張を和らげてくれ、よく眠れる。
- 登山は、全身運動で多くの酸素が必要です。だから禁煙。できない方は、「節煙」を実行すること。
あなた、任せ!
- あの人に任せておけば大丈夫。私はただ、ついて行くだけ。歩くルートも、どこで泊まるかも全く無関心・・・。「観光気分」では、山歩きはできません。しっかりした心構えと事前事後の学習、日頃の健康管理、トレーニングはとても大切です。
マナーをまもって!
- 帰路、汗臭いシャツを着てバスや電車に乗るのは、マナー違反。日帰りでも着替えのシャツくらいは、持参したい。
調子が悪い時は、自ら下山
- 登山の当日、風邪気味や疲労が残っているときは、参加を中止すること。
- 登山を開始して30分位歩いていても、いつもより体調が悪いと思うときは、自らすすんで下山を申し出ること。決してはずかしいことではありません。
- 歩き始めの30分は、ゆっくり歩いて「心臓」「呼吸」「筋」などの身体調整を意識して歩く。
「安全な場所」で休憩する
- 休憩する時は、ザックは「山側」に置くこと。
- 他の登山者に迷惑にならないところに腰を下ろす。
- 大きく4~5回「深呼吸」をして、呼吸を整え、気分落ち着かせる。
- 衣服の点検と調整、現在地の確認、水分の補給、靴の履き具合やザックのバランスのチェック
- 出発する時は、忘れ物に注意。
すぐ「息苦しく」なる
- ゆっくり、歩幅を小さく、足をマメに運ぶことがコツ。休憩の際は、深呼吸を大きく5回位を行い、腰を下ろす。
足が「つる」・・・
- 登山中に「足がつる」・・・明らかに運動不足が原因。日頃からトレーニングを。
- 筋肉痛と関節痛は、登山中に最も起こりやすい。ストレッチを。
山の天気は、よく変わる
- 山間部は、平野部より天候の悪化が早く、晴天への回復が遅い。
靴ズレや「マメ」と「ツメ」
- ゆるめの靴は、靴下が靴の中で「足が遊ぶ」のでマメや靴ズレができる。靴の相性が悪いときは、前もって足にテープを貼る。
- 伸びた「ツメ」は、出発前に切ること。足のツメがのびていると、下りでは生ツメをはが
すことになる。
登山用品のメンテナンス
- 帰宅したら、使用した登山用品や服装をチェックし、次回の登山に備える。そして復習も忘れずに。
無理は禁物
- 経験を積むと、高い山々に登りたくなる。あの人が登ったから、私も登れる。せっかくきたのだからあそこにも。登りたい気持ちはわかりますが、「登りたい山」と「登る山」は、全く違います。こんな気持ちの時は、要注意。
ある日、「突然」・・・
- いままでの山行では、何事もなかった。今回は、足をつったり、体調がいつもと違うぞ。これは、身体に変化が現れた証拠で“要注意信号”です。過信は、最も恐ろしいことです。
- 次回の山行からは、必ずランクを下げ体調をチェックすること。
- 年に2回位は、定期的に健康診断を受け、特に「心肺機能」のチェックをすること。
道に迷ったら・・・
- 来た道を引き返し、はっきりしているところまで戻る。
- 谷筋には、絶対に降りない。
- 歩き回ると体力を消耗し、ますます分からなくなる。
- ホイッスルで連絡を取り合う。
避雷の心得え
- 姿勢を低くする。
- 山頂、尾根、大きな岩や木の下を避ける。
- 危険を感じたら、ピッケル、カメラ、時計、カギなどを体から離す。
- 大勢で一緒に行動中は、分散する。
- 小さくしゃがんで雷と雨をしのぐなど、少しでも「地表よりも低くする」ことが唯一の方
法といわれています。
気温と体感温度
- 高度が100メートル高くなると気温は0.6度下がります。平地で30度の真夏でも3,000mでは、12度となり、体感温度は、風速1m増すごとに1度下がり、雨で濡れるとさらに冷える。暑さ寒さは、重ね着で調整。
バテない歩き方
- 平地の3分の1の速度でゆっくり、歩幅が大きいと足に負担がかかるので「歩幅を小さく」、足裏全体をつけた「ベタ足」で歩く。そして呼吸の仕方を工夫して、水を適度に飲む。
天気ことわざ
- 山が傘をかぶると雨が降る
- 雲が西(北)へ行くと雨、東(南)へ行けば天気になる。
- 太陽(月曜日)が傘をかぶると翌日は雨
- 高い雲と低い雲が、逆方向に流れると風や雨
- 羊雲が出ると雨
- 煙がたなびくと晴れ
- 朝焼けは雨、夕焼けは日和
- 星がまたたくと、明くる日は風強し
- 朝雷に川渡りはするな
- 東の雷、雨降らず
- 朝虹は雨、夕虹は晴れ
- 鐘の音が、近くに聞こえるのは雨
- 遠山が、近くに見えると雨が近い
注:掲載した内容は、毎日新聞旅行(大阪)/毎日登山会発行「山歩きのコツ」から引用した。